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2017年2月20日、ワッツ君がカムアウトした件。

2017年2月20日、私(たち)には馴染み深いドライバーのダニー・ワッツがホモセクシュアルだとカムアウトしました。
「サーキットで彼女連れてきてるの見たよ」とかいう人もいましたし、あれ?子供いなかったっけ?とかちょっと思ったりもしたのですが、ドライバーとしての引退後、悩んでいたけど公表することにした、ということのようです。

以下は英Autsportから抜粋の手元用和訳。

モータースポーツはとても男性的なスポーツですから、その中では自分のセクシュアリティを隠していないといけないような気持ちになるんですよ。
けれども自分の中で「もういいだろ、隠す必要はもうないだろ。そろそろ自分に嘘をつくのを止めて、公表してもいいんじゃないのか」という思いが燃え出したんです。
最初に告白をしたのは家族と、仲の良い友達相手です。明らかにみんな最初は驚いていましたけれど、理解してくれました。
彼らが理解してくれたら、きちんと発表しようと思っていたんです。
レースに自分が参戦するのを止めた今の方が、公表はしやすいかな、とも思いました。

自分のセクシャリティを公表することによって一番心配なのは、周りの人たちがにどう思われるか、どういう態度を取られるか、ということです。
例えば人と会ったときに握手をしますよね。そのときに相手が握り返してくれるかな?とか、そんなことを考えてしまう。
あとは自分が相手の眼を見て話せるかな?とかね。気まずくならないかな?とか。
カムアウトしたらどうなるだろうと考えると、もう数え切れないくらい色々なことが頭の中にめぐってくるんです。
もう今から、次にサーキットでパドックに行ったときのことを考えると、胃の中がぐるぐるしてくる感じです。彼らが自分のことをどう思っているかがわかるわけですから。本当に怖いです。

このまま家族と、仲のいい友人たちの間だけにしか言わないで生きていくこともできたけれど、ぜんぶ言ってしまって「自分はこういう人間だよ、みんなは俺のことをどう思う?」っていう生き方もある。

ここ半年は「どうしよう」と考え続けていたんです。
公表することでみんなに否定されるかもしれない。お気楽な性格だと思われてるけど、毎晩ベッドに入った後にはそのことで頭が一杯になって、疲れ果てていました。
だけど気がついたんです。自分の今の人生は幸せではないな、と。何も楽しくない。
じゃあ何がベストな解決法かと考えれば、カムアウトすることだったんですよ。カムアウトして皆が自分のセクシャリティのことを知ってもらえばいい。好きなように思ってもらえばいいんですよね。「いいんじゃない?」でも、「うわっ!」でも、「道徳的に間違ってる!」でも。

とりあえず、今夜からはベッドに入っても悩むことはないんです。もう自分はオープンにしてしまったわけで、これで人生が大分幸せになるかなって思います。


そして以下はDSCから抜粋。
DSCはワッツ君がル・マンの後にストラッカと切れた理由(そして引退の理由)についても聞いているのでこれもありがたい記事。
(ちなみにワッツ君が首になったのは2016年のル・マンがダメダメだったから。ゲイとか関係ない)

Q. ホモセクシャルであるということを公表して新しい人生を歩むことになりましたが、何があなたにカムアウトさせることになったのですか。

A. もう現役を引退して、公表も大分しやすくなったかなと思ったんです。2つの人生を歩み続けることはやっぱり大分キツい。モーターレーシングはとてもマッチョな世界ですからね。やっぱり自分が現役の時はできなかったですよ。スポンサーやチームがLGBTフレンドリーじゃないかもしれないっていう心配もありましたからね。それとは別に、長年隠し続けていて、落ち込むし、寂しいし、面倒だし…。そうしたら「なあ、人生幸せになりたいなら、そろそろこの肩の荷を下ろしてもいいんじゃないのか?勇気出しなよ。そうしたら人生もっと幸せで、ストレスフリーになるんじゃないの?」って自分の中から声が聞こえてきたんですよ。
ただ、どうやってカムアウトするかというのは難しい決断でした。今までと同じように普通を装っていることもできたのにいきなり手の内を全部見せて、みんなからの反応を待つことになったわけです。ただこういう公表をしたことで会う人みんなに説明をし続けることはなくなるわけで、自分にとってはこれがベストなカムアウトだったんです。
まずは自分に一番近い人たちに打ち明けました。みんな最初は驚いていましたけれど、打ち明けたことも理解してくれました。

Q. 現役だったときにはカムアウトしようとは思わなかったんですか?

A. 現役時代にカムアウトしなかった一番の理由は、スポンサーが理解してくれるかどうかということでした。シートを獲得できるかと言うことにも直結しますし、自分が加入しているチームの士気にもかかわるし、チームとの関係をこじらせることもあるかもしれないし…。正直、この段階になってもまだやっぱりビビってますよ。浮かれてるとはとても言えない。みんなが自分のことをどう思うかとか考えてたら心配して眠れなかった。だけど長い目で見たら、最初の恐怖が過ぎれば、みんな受け入れてくれて落ち着いてきたら、また自分の楽しんでいる仕事、ドライバーコーチとしてドライバーのポテンシャルを最大化すること…これを続けていくことができると思ったんです。一部の人は僕のカムアウトをポジティブに受け入れてくれないだろうということもわかってます。でもそれは仕方ないと思うし、逆にこれで誰が本当の仲間、友達かというのがわかるんじゃないかと思います。

Q. あなたのカムアウトが、同じような状況の他の誰かにも影響を与えると思いますか?

A. イギリスやヨーロッパのレーシングドライバーで、自分みたいにカムアウトした人は他にいないですからね、影響は与えることにはなるとは思います。まあ連鎖反応的なことはないんじゃないかな。でも、例えば今までの自分と同じような苦境にいる人が僕と話したいことがあるなら話をするよ。喜んで。あの世界でゲイだとさびしいからさ。正直なところ。
まあ何にしても、自分は今までの自分となんら変わらない自分なんだ。今年もHitechのヨーロッパF3で、チャンピオンヒップに挑戦していくのが楽しみでたまらないんだよ!


とのことです。

からしたらワッツ君はワッツ君。ゲイだろうとなんだろうと関係ないのです。
小さくって(笑)、速かったドライバーさん。マメなドライバーコーチさんなのです。
ワッツ君の笑顔は見ていて気分が良いので、今後も元気に頑張ってもらいたいな。

Lady GaGaのBorn this wayにもありますが、
Don't hide yourself in regret
Just love yourself and you're set

ですし、
No matter gay, straight or bi
Lesbian, transgendered life

です。



幸いにも私が知ってる人たちは、ワッツ君がゲイだろうと関係がないようです。
「また一緒に飲もうな」とかそんな感じの人たちがばかりなのでなんか安心します。

ついでに。

現状ですと多分ワッツ君が一番有名なオープンリーゲイのモータースポーツ関係者かもしれませんが、Mike BeuttlerというF1にも参戦したことのあるドライバーさんがゲイだった(らしい)です。
彼は公表はしてなかったけど状況的にどこからどう考えても…という話らしい。
たまにサーキットにグラマーなおねーちゃんをカモフラージュのために連れてきてたとかいう話もある。
彼は1940年カイロ生まれのイギリス人だったのですが、1988年にカリフォルニアでAIDSのため死亡したそうです。
彼の伝記が出るとか言う話を聞いてたんだけど結局どうだったんだろう。

それより古い話ですと第二次世界大戦前~戦後の人で、Robert Cowellっていうイギリス人が自分でマシンを作って戦前のグランプリレースに出たりしていたそうです。彼は1951年にイギリス初の性転換手術を受けてRobertaという名前の女性になったんだそうです。
その後もレーシングカーを作ってF1にエントリーしようとしたけど失敗したりとかあったそうですが、女性になってもヒルクライムに出て優勝したりとかしていたそうです。
彼女はXX-male症候群(という日本語でいいのだろうか?一見男性だけど性染色体はXX)だったようです。

あとワッツ君のインタビューでは「ヨーロッパでカムアウトしたドライバーいない」って言ってたけど、Mike Verschuurっていうオランダ人のドライバーさんがオープンリーゲイだったよなあって思ってちょっと調べてみたら、彼は2011年にカムアウトしたらしい。
まあ知名度はワッツ君の方が大分上ですかね。

あとエレン・ロールが気がついたら彼女と一緒にモナコに住んでますね。
彼女もそういう噂はあったんですが(友達とか「絶対そうだから!」って力説してたわ…)、気がついたらLebensgefährtin(直訳したら同棲してる彼女。もうちょっと実用的な表現だと内縁の妻とか同居中のパートナーとか)とかいう人がいたので「あら、そうなのね」と思いました。

アメリカだともうちょっとオープンにしてるLGBTのドライバーさん(や元ドライバーさん)がいます。
私が最初に知ったのはTerri O'Connellというトランスジェンダーの女性。
彼女がJ.T. Hayesという男性だった1990年にはNASCAR Winston Cupに出たことがあるそうです。
彼女も性染色体がXYではなくXXだったそうで、前述のロベルタ・コーウェルと同じなのかな…?
彼女についてはDangerous Curvesという自伝が出版されているのですが、Kindleだと今は買えないので残念。
また買えるようになるみたいだけどどうだろう…?

ロードコースの方だとEvan Darlingってドライバーさんがいて、彼はGrand-Am Road Racing Series(現在のContinental Tire SportsCar Challenge)に出ていたそうです。

あとNASCARだとStephen Rhodes というドライバーさんがNASCAR Camping World Truck Series、あとJustin MullikinというドライバーさんがNASCAR Grand National Sportsmen divisionにいるという話らしい。
NASCAR Camping World Truck SeriesはいわゆるNASCARの下の下のカテゴリという認識でいいのだろうか。
(F1、GP2、GP3みたいなカンジでよいのだろうか)
NASCARとかアメリカの方はさっぱりわからん…
シリーズ名もスポンサー名とか入るしさ…。

二輪でもいたらしいですね。1939年生まれのカナダ人ということで現役だったりとかはしないのですが、Michael Duffという選手がMichelle Duffと名前を変えたそうです。モトGP(60年代もそういう言い方だったのかは知らない)での優勝経験あり。

あー、あとはケイトリン・ジェンナー。カイリー・ジェンナーのお父さん。
カイリー・ジェンナーは「Kylie」っていう名前を商標登録しようとしましたがカイリー・ミノーグに異議を唱えられて負けました。そりゃそうだろ…。

ま、それはさておき、ケイトリン・ジェンナーは性同一性障害性別適合手術を受ける前はブルース・ジェンナーという名前で十種競技でオリンピックで金メダル取ったり、1986年のセブリング12時間でスコット・プルーエットとクラス優勝したことのある人です。

まあここでLGBTの人をわらわらと列挙したのは、アレです。
もしワッツ君みたいに悩んでいる人がいたりするなら、「あなただけじゃないよ」とか「ワッツ君だけでもないよ」というか。
いないわけじゃないんだよ、あなただけじゃないんだよ、というか。
そういう思いがあります。

「男性ドライバーAが女性と結婚したんだって」とか「女性ドライバーBが男性と結婚したんだって」いう話と
「男性ドライバーCがゲイなんだって」
「男性ドライバーDが男性と結婚したんだって」
「女性ドライバーEが女性と結婚したんだって」
「男性ドライバーFは前は女性だったんだって」
「女性ドライバーGは前は男性だったんだって」
というような話は同程度の重さであってほしい。

私はストレートなんだけど、性的少数派だからって告白することがそんなに勇気を必要とすることでない世の中がいいな、と思う。
(ついでに言うとストレートの独身にも優しい世の中であって欲しい 笑)
ま、そんなカンジです。

以上、付き合ってた彼氏が女の子になった後も同じ付き合いを要求されたことがあってちょっと困ったことがあるTomokoからの投稿でした!